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第三十一話

last update Dernière mise à jour: 2026-01-14 19:43:01

 風呂に入って翌日、朝起きるのが辛かった。月曜は一コマ目から授業がある。寝不足のまま大学へ向かった。午前中は居眠りをしつつ授業を受け、昼食は部室で食べることにする。最近いつも部室で食べていたから、習慣になってしまったかもしれない。食堂で食べたほうが量も質もいいのだけれど。

 部室にはすでに十人以上来ていた。

「おはようございます」

 僕はまたビールケースに座る。大学生協の電子レンジで温めた弁当のフタを開ける。片手持ちで弁当を食べるのにももう慣れた。

「次の公演の時期って、もう決まってるんですか?」

 部室にケンさんがいたので気になっていたことを聞いてみる。ケンさんは部長の鈴木先輩だが、だれも部長と呼ばない。なので、僕もケンさんと呼んでいる。

「ちょっと先だけど、次は十一月だよ。夏休み明けから稽古を始める予定。新人公演だよ。俺らも手伝うけど、基本的にメインで動くのは一年だけでやってもらう予定」

「……そうなんですね、六人だとちょっと厳しそうな感じがしますね」

「ああ、音響照明とかの操作関係は二、三年でやるよ。でも役者も脚本も音響照明舞台プランとかも、全部一年でやってもらうよ。たし
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